夜のリラックスタイム。
ふとサチ子と目があった。
「さっちゃん」と声をかけると、サチ子はひとつあくびをして、まるくおさめていたからだをつぼみの花が開くようにゆっくりとのびやかに伸ばしていく。
私のほうを見ながらゴロゴロとのどを鳴らし、短めの足をピンっと張るとあたまをくるっと返してみせた。
「なんてかわいいの、さっちゃん」
そばにいくと、さらにお腹をみせてもう伸びない足をもう一度ピーンと抜けてしまうほど力いっぱいに伸ばす。
ゴロゴロ音はボリュームを上げ、完全にあおむけになるとしっぽだけがぴょこぴょこ左右に跳ねていた。
ぱたんと本を閉じるように体を戻すと、頭を差し出して私に頭突きを求める。
この最高に幸せな状態で差し出されたオファー。それに応えるためにコツンと額をあわせると、ゴロゴロ音はフクロウの声のようにふぉろーふぉろーと喜びあふれだす。
サチ子は私と目があってから一度も声には出さず、からだや行動だけでこれほどまでの愛情を表現してくれる。
一方、表現に乏しい私は、猫が理解できない言葉を使って「好き」を伝えるために喋りまくる。
そばに寄って触れながら話しかけることでしかサチ子に「好き」を伝えられない。
サチ子は私に話しかけたり触れたりしなくても、「好き」を表すことができる。
人間の愛情表現の薄っぺらさに気づいてなんだか情けなくなる。
もしかしたら、私の想いは半分も猫たちに伝わっていないのでは?
でもその分、猫の想いを100%受けとめてあげることはできるだろう。




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