小さな丘の小さな木

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ある名前もない村に、それはそれは美しい丘がありました。

なだらかな曲線を描くその丘の頂上には、一本の小さくてかわいい木が立っています。その村に住んでいる唯一の村人はその木を眺めることが日課でした。

ある日、名前のない村の住人は不思議なことに気づきました。 「あれ?この丘、昨日より少しだけ動いてない?」 住人はじーっと木をみつめたあと、やっぱり勘違いだと思いました。 「丘が動くことはないか。私の見間違えだな。」

しかし、住人違和感は確信に変わっていきました。 昨日は名前のない村の真ん中にあったはずの丘が、今日は少しだけ西にずれているのです。さらに、耳を澄ませると、地面の底から「ゴロゴロ……」という、雷にしては小さく、地鳴りにしてはあまりに規則正しい音が聞こえてくるではありませんか。

好奇心に耐えかねた住人は、やらなければならない掃除や洗濯を後回しにしてその丘をみつめていました。 「この下には、きっと伝説の巨人が眠っているんだ」

住人が丘の頂上の木を少しだけ触ったその時です。 手が丘に触れました。それは柔らかく、温かく、そして……ふかふかしていました。

「……にゃあ?」

空を揺らすような巨大な鳴き声とともに、大地が激しく揺れました。 名前のない村の丘にあった小さな木は巨大な猫の上に置かれていた偽物の木だったのです。

ゆっくりと、丘の向こうから二つのエメラルド色に輝く巨大な月のような目が現れました。

「ごめんよ、起こしちゃった?」 村の住人が尋ねると、猫は大きなあくびを一つ。その拍子に、丘のシンボルであった小さな偽物の木は丘から転げ落ちていきました。

「わたしの背中で遊ばないでくれる?」

猫の声は頭の中に直接響くテレパシーのようでした。この巨大な猫は、何時間もの間、同じ場所で丸くなって寝ていたのです。背中に感じた違和感や、村の住人が何やらたくらんで変なことを背中で始めても、猫は「またなんかはじまった…」と放っておいたのでした。

「もうひと眠りするから、背中に何も変なものを乗せたりしないでくれる?ごはんの時間になったら起こしてよ。」

猫が大きな体を再び丸めると、村の住人はまた静かに小さな偽物の木を美しい猫の背中の丘に置きました。

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