その足のクセはいったい誰に似たのか 親の顔が見てみたい

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小さいころ母親によく言われていたことを思い出す。

「足!」

居間や台所の引き戸は、半分がガラスになっていて
比較的軽く開けることができた。
そうなると、手がふさがっているときなどは、おのずと
足がでるのである。

第三の手と言い訳をしていた私は、そんな母の忠告も軽く聞き流し
いつも足を多用していた。

まだ小学生ぐらいだったころは、お盆や年末になると何かと親戚
が一同に集まり、にぎやかな宴会が催されていた。
今ではそんな風習がまぼろしか夢だったかのように、跡形もなく
消え去り思い出すら色を無くしかけている。

宴には手伝いが必要になる。お酒やジュース、やれデザートだの乾きもの
だのいろんなものをひっきりなしに運んでいた。
とうぜん両手はふさがり、目の前には襖がある。

台所の引き戸のようには軽く開かない、座敷というちょっと格があがった
部屋にふさわしく、重みのある襖。

私は第三の手を使うことに挑戦してみた。
靴下で襖の塗りの部分は滑り、ただ撫でるだけになっていたので、
襖紙のところに足の裏をぺたっと張りつけ、一気に力をいれた。

すると、横に開くはずだった襖が向こう側へばたんと倒れてしまったのだ。
これには、散々怒られた記憶がある。
幸い、襖の向こうには誰も座っておらず、襖も無傷だった。

その後もこの教訓を全く学ぼうとしなかった。
むしろ足のクセがひどくなっていった。
足で引き戸を開けることは日常的で、横になったりぐーたらするときは
いつも何かに足をあげていた。

母はその恰好を見つけるたびに、「足っ!」と飽きずに言い続けた。

そのクセは今でもなかなか抜けずに、ひとりで暮らしていることを
いいことに、足をあげては人様にみせられないような恰好で
くつろいでいる。

そんな私と暮らして早9年になるこの子。

思わず「足っ!」と言っている自分がいる。

まったく、どこでそんな恰好を覚えたのか。

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