北国の暗い昼下がり かすかに聴こえる低い音の正体がかわいすぎた

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北国の冬は暗い
薄暗い明るさのまま日が暮れる
風はいつも強めで窓が小刻みに揺れる音がする
風のない日は家の下から凍りつくような底冷えと不気味な静けさ

今日はめずらしく風も寒さもない
部屋の中は音量を低くしたテレビの音だけ
そこにどこからともなく聞こえてくる音
「んう゛ーんう゛ー」とスマホのバイブ音のような
気がして画面に目をやるが、鳴っていた様子はない
気のせいか…

そのまま特に気にも留めずにいると
また「んう゛ーんう゛ー」と確かに機械的な音がする
スマホでもない
風の音でもない
何の音だろう…

なんとなく音が気になりはじめた
聞こえた音の記憶をたよりに
おなじような音が出るであろうものを
見渡しながらさがす
冷蔵庫…テレビ、ストーブ…
どれもその音にあてはまらない
空耳だったのか…
いや、たしかに聞こえたはず

猫たちはその不可解な音に誰も反応しない
私だけなのか…
やはり気にしすぎなのか…
それとも私に聞こえたあの音は猫たちが気になる音とは
周波数が違っていて猫には聞こえない音なのか

気にしなくても問題ないとは思うけど
ここまでくると正体を見つけたくなる
さっきからいろんなことを考えているが
いつの間にかあの音は聞こえなくなった

何だったんだろうと思いながら
諦めようとしていたとき
「んぐーんぐー」とまた鳴りはじめた
猫の耳のアンテナのように一気に音に集中する
「んぐーんぐー」
心なしか音が大きくなっているように感じる
今しかない、音が鳴っているうちに見つけるんだ
聴覚をとぎすまし音の正体をさぐる。
そのとき、

「すぴー…」

すぴー?

ダイニングのベンチで寝ていた黒猫のサチ子に
焦点が合った
「なんだ、おまえか・・・」

いびきってこんな音だっけ?
音の正体にほっとして
いびきの音だと気づけなかった自分を笑った

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